月別アーカイブ: 2007年2月

ジャズで食っていく <最終>

こんなに長く続くとは思っていなかったが『ジャズで食っていく』もいよいよ最終回となる。

結論として『ジャズで食っていく』ことは条件がそろえば『可能である』といえる。

その条件とはまとめると以下のようになる。

1.人口の多い街に住んでいる

2.ライブで人を呼べるキャリア、実力がある

3.生徒をとれる

4.稼ぎのよい嫁さん、もしくは旦那がいる

5.元々実家がお金持ち、もしくは事業主(跡を継げる)

これらの条件に2つ以上(特に4.5)当てはまるものがあれば、『ジャズで食っていく』ことは十分可能であると考えられる。


ちなみに私には『ジャズで食っていく』ことはできそうにない。

追伸:

個人的な意見としては『ジャズ』は趣味にするのが一番だと思う。現実的にジャムセッションなどにくるジャズメンの多くはサラリーマンである。

昔ギターをやっていたとき楽器屋に就職することを本気で考えたこともある。大好きなギターに囲まれた生活が『楽しくない』はずがないと思った訳である。そのことを仲良くしていた楽器屋の店長に言うと、渋い顔で『楽器屋に就職するとギターが嫌いになるぞ』と言われた。その意味はいまはよく分かる。

『好きな土地には住むな、好きなことは仕事にするな』は私の座右の銘である。

nice!をくれた方々どうもありがとうございます!

ジャズで食っていく <その6>

3.CDなどの売上

CD収入と書いたが、これは基本的に自主出版のCDで、ライブなどにいくとそのアーティスト達が制作したCDを買うことが出来る。最近ではレコーディングスタジオに行かなくても『EDIROL』などの安価で優れた録音機器があるので普通のスタジオでもレコーディング可能である。CDの原価は安いため、1枚2000円で売ってもそこそこの収入が得られる。しかし、これはあくまでオプション収入である。

4.他のアルバイト収入

アマチュアジャズメンの多くは当然のことながら(一部を除き)他にアルバイトをしている。その内容は多岐にわたり、コンビニ店員からビル掃除、派遣社員まで。しかし生活の中心がジャズである以上は常勤、拘束時間の長いアルバイトには就かない傾向にあるようだ。ジャズではないが、かの有名な『エリック・クラプトン』も売れない頃は昼間に工事現場で働き、ドロドロになった姿でライブハウスのブルースセッションに明け方まで参加して腕と知名度を上げていったそうである。

ジャズに限らずミュージシャンにとってこの『副業』と呼ばれるアルバイトは生活の為には必須である。

5.配偶者または家族のバックアップ

実はこれから書く『配偶者または家族のバックアップ』はジャズメンの生活の支えにかなり大きなウェートを占めていることが考えられる。

考えてみてほしい、20代ならまだしも30代、40代で芽が伸びずともアルバイト、ライブ収入だけで生活を続けられる人間が何人いるだろうか。たとえ知名度が上がったとしてもそのような収入で30年、40年と生活して行かなければならなく、その間に当然結婚、女性なら出産、子育て等が始まるわけである(独身でもかまわないが)。おまけに年金や健康保険料だって払わなくてはならない。

そして時にジャズメンは、特にニューヨークへ、『渡米』することがある。いわゆる武者修行の旅だ。私もニューヨークへは行ったことがあるが、正直言って何のツテやコネもない日本人がふらりと行って『金もなし』に『アルバイトをして』住める所ではない。それにそもそもニューヨークでは外国人のアルバイトは禁止されている。それでもどうしても、と言うのならば、違法に不当に安い賃金で厨房の皿洗いなどをやるしかない。これで家賃相場が15~20万といわれるマンハッタンの比較的安全な地域に住めるわけはない。また、日本人なら3ヶ月以内ならばヴィザ無しで住めるが、それ以上住むのなら『留学』という形でヴィザを発行してもらうしかない。

当然『留学』にもお金がいる。ジャズスクールで有名なバークリーやニュースクールは最低でも年間300万は必要だ(奨学金を得ればもう少し安くなるが)。これに家賃、そして生活費などが加わる。平均的にみて留学費用は1千万近くは用意する必要がある。もちろん中にはこの資金を日本でアルバイトをして稼ぎ出し独力で渡米留学するハードなジャズメンもいるが(と留学体験記で語るのをみることがある、たいてい一人暮らしをしながら、と書かれている)、一人暮らしで時給800円のバイトをどれだけやれば何年で1000万貯金できるのか私にはわからない。おそらく『実家暮らし』の間違いではないかと思う。『実家暮らし』はそもそも『家族のバックアップ』の範疇である。

私の知り合いに無名の2人のジャズメンがいる。Aさん(36)は妻子持ち。Bさん(45)は妻子無しでしょっちゅうニューヨークへ武者修行に行っている。
Aさんの奥さんは建築設計士で、Aさん曰く、生活費のほとんどは妻が稼ぎ出している、という。Aさん自身は居酒屋でアルバイトしながら夜のキャバクラで明け方まで演奏している。Bさんは未だに両親が仕送りしているし、健康保険、年金などすべて親が払っている。

とここまでやや否定的な文章が続いたが、『配偶者または家族のバックアップ』は決して悪いことではないし、『バックアップ』してもらえるのならしてもらえば良いと思う。一度キリの人生、『配偶者または家族のバックアップ』で自分の好きなことができるのならそれは『最高の人生』であろう。そしてまた『配偶者または家族のバックアップ』が『ジャズで食っていく』最もよい方法であることも否定できない。

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ジャズで食っていく <その5>

前回のつづき

2.レッスン料

レッスン料、文字通り生徒を教えることによるレッスン料での収入である。この中でも『○○大学音楽科ジャズ専攻科講師』や『○○音楽スクールジャズ科講師』など、組織と雇用契約を結んでいる場合は断トツに安定しているため、非常に運が良いといえる。

しかし(個人的に教えられる知名度と技術をもつジャズメンの)多くは『個人的に生徒をもらって』そのレッスン料を収入にしている。レッスン料の平均は一回30分5000円から一回1時間7000円。一回30分月4回15000円など、これもまた前述のライブハウスチャージ同様にアーティストの知名度から様々に変化する。

A先生。知名度は無いが親切に教えてくれるため口コミ人気。月謝の安さも魅力。一回1時間月3回で8000円。現在生徒数20人。

手取り単純計算で8000×20人=160000

このようにある程度生徒数が確保できれば生活していくことは可能である。しかし『個人ジャズ教師』をやる上での最も大きなリスクは『生徒がいつやめるか分からない』ことである。つまり今月30人いた生徒が来月には15人になっている可能性は十分にある。このリスク回避のために個人ジャズ教師は『3ヶ月分一括支払い』や、月謝の数ヶ月分にあたる『入会金』をあらかじめ徴収している。

『ジャズ教師』は首都圏など立地の良い場所で人気が出れば手堅い商売である。しかしジャズ教師に向いている人と向いていない人は割とハッキリしている。当然『人にモノを教えるのが好きな人』や『効果的な訓練法』を持っている人は向いているだろうし、『自分の演奏・音楽を聴いてもらうこと』に重点を置く人は教師には向かない。

そして多くのジャズメンは『自分の演奏・音楽を聴いてもらうこと』に重点をおいているため『ジャズで食っていく』ことを決めた時からこの『ジャズ教師』の道を進もうと考えているジャズメンは多くはない(少なくとも私は知らない)。

いずれにせよ『個人的に教えられる知名度と技術をもつ首都圏在住のジャズメン』ならば『ジャズ教師』道は手堅いといえる。

次回 3.CDなどの売上、4.他のアルバイト収入

最近大はやりの「体験レッスン」。しかし体験レッスンをしてもなかなか入会に至らないのが実情。どのようにすれば、生徒さんのニーズに応えられるのか?必要なノウハウを具体的に考え、レッスン・プログラムも紹介。

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ジャズで食っていく <その4>

フリー

 

男なら(もちろん女性でも)誰しも憧れる『フリー』という言葉。その言葉の響きには、どこにも所属しない一匹オオカミ、このハードボイルドな世界において『頼れるのは己の力』のみという『男心』をくすぐる要素がたくさん詰まっている。そして多くのジャズメンに多いのがこの『フリー』形態である。

フリーの収入は主に以下のものである

1.ライブにおけるチャージバック

2.レッスン料

3.CDなどの売上

4.他のアルバイト収入

5.配偶者または家族のバックアップ

これらを順を追って説明していくこととする。

1.ライブにおけるチャージバック

 ジャズメンの多くはライブを行う。『ジャズで食っていく』ことを決めたジャズメンがまず考えるメイン収入はこの『ライブ収入』である。

 『ライブ収入』はライブハウスによってピンキリであり、また曜日、立地、ジャズメンの知名度により複雑に変化する。チャージバックは通常ライブハウス側が設定しており、多いところでチャージの50%バック。少ないところで10%~20%バック。中には『ビール2杯タダ』や『15人以上のお客でチャージバック発生』など、ほんとうに様々である。またチャージそのものの設定金額もジャズメンの知名度により予想される『需要知名度曲線』とでも呼べる法則が働いている。経験上、首都圏では通常のライブハウスで演奏する場合、有名ジャズメンが3800円~4000円、アマチュアが1000円~2500円で安定しているようだ。当然『ブルーノート』やコンサートホールでのライブの場合、チャージは5000円から15000円ぐらいまで跳ね上がることになる。

<一例>

Aハウス キャパ50人 チャージバック30%

某有名ジャズメンライブ、チャージ3800円。 当日人数25人。

(3800×25)×0.3=28500円 トリオ編成の場合のジャズメン手取り一人当たり約9000円。

アマチュアジャズメンライブ、 チャージ2200円。当日人数30人。

(2200×30)×0.3=19800円 トリオ編成の場合のジャズメン手取り一人当たり約6600円。

とこのように、チャージを安くすればそれだけお客の人数を確保できる(可能性がある。安いから来るとは限らないのが音楽ライブ)、一方でチャージ金額を上げれば上げるほど客足は遠のくため、チャージを上げるのなら『この金額を払ってでも見たい!』と思わせるジャズメン知名度が必要になる。

結論として考えるなら、チャージバックがよく立地条件のよいライブハウスで毎日ライブを行い、その都度20~30人のお客を呼べるのなら、ひと月18万~30万の収入が得られる可能性はある。

この金額は日本で生活していくのには(贅沢しなければ)十分可能である。しかしこの『チャージバックがよく立地条件のよいライブハウスで毎日ライブを行う』ことは実際不可能であり(私が見た某有名ジャズメンのライブで最も少なかった客人数は3人である)、また『ライブ収入』は永続的にあてには出来ないため、この生活には『高リスク』を伴うことにはなる。

次回 2.レッスン料


☆機材が何でも揃っている、いくらでも騒げる自分たちだけの空間。それがライブハウス。美味しい食事とこだわりのお酒・・・。大人だからこそできる余裕の遊び。

バンド演奏だけじゃない、色々な遊び方伝授します。

〔内容〕

第1章 ライブハウスを遊ぶ3つのポイント

◆ライブハウスで何ができる?基礎知識教えます。

第2章 ライブハウスに遊ぶ先達の楽しみ方拝見

◆経験者が語る十人十色エピソード。

第3章 ライブハウスを遊ぶためのQ&A

◆はじめての人にも安心!素朴な疑問に答えます。

第4章 ライブハウスで遊ぶためのスケジュリング

◆企画から本番、打ち上げまでの流れを解説。

大人のライブハウス遊び

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  • 出版社/メーカー: 全音楽譜出版社
  • 発売日: 2005/05/20
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ジャズで食っていく <その3>

そもそもジャズメンの収入とはどれくらいなのだろうか。そして果たして『ジャズで食っていく』ことは可能なのだろうか。

メジャーレーベル(マイナーでも別に構わない)と契約、とにかくどこかの事務所と雇用契約を結んでいるジャズメンの収入は、要するに歩合制のサラリーマンと変わらないわけで、比較的把握しやすいようだ。とはいっても、CD販売数、ライブ、イベント、ラジオなど出演回数などで同じレーベルに所属するアーティストであってもピンキリであることが予想される。

またポップスなどに比べ『ジャズ市場』は極端に狭い(日本の場合。欧米などはそもそも市場規模が違いすぎるため日本と比較できない)。最近では若手イケメン、イケギャル(?)アーティストが『ジャズとポップスの融合なる音楽』などで『泥臭い、小難しいイメージ』を払拭し、老若男女問わず幅広いファンを生み出しているので、ジャズ市場はかつてに比べはるかに明るいだろう。しかしポップスの場合、あたれば『100万枚突破!』が可能だろうが、ジャズでこの数字は雲の上の話である。

こうした事からも『CD販売数』で利益を考えた場合、ジャズが不利なのは明白である。当然レーベルアーティストもレコーディング以外に多くのライブ活動をおこなっている。

いずれにせよ、レーベル各社ともそれは『商売のプロ集団』である以上、多かれ少なかれ『売れる』可能性がないアーティストと契約はしない。『売れる』可能性のあるアーティストのセールスプロモーション(CMや街角イベント、大手ライブハウスでのディナー付きジャズライブ、など)をおこなってお金をかけていくわけである。そしてそのかけたコストに見合う利益を回収する。その後、その利益の数%がアーティストへと還元される。このサイクルが維持される限りは、最低限『食っていく』保証はされているのではないか。

以上はレーベルアーティストの例で一般的に『ミュージシャン』になるといった『夢の最終形態』『万人に一人が掴めるチケット』である。なので、我々が『ジャズで食えるか?』と議論する場合、多くはこれには当てはまらない。

問題なのは多くのジャズメンがそうであろう『フリー』の形態である。

つづく

日本のジャズメンにも素晴らしい人はたくさんいます>>>>

いい声してます。バックサウンドも最高

30(thirty)

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日本人離れの歌唱力。マニュエル・ロシュマンのピアノ演奏も注目。これ以外に多くのアルバムをリリース。

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演奏に品があり、その上オリジナリティあるフレーズがよいですね。

ユー・アー・ソー・ビューティフル

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ジャズで食っていく <その2>

 一言でプロのジャズミュージシャンといってもその形態はラウンジプレイヤー、講師、ライブ活動、レーベルと契約、などなど様々なので一概には言えないが、ミュージシャンに限らず、プロの条件として『自分の興味の無いことでもやらなくてはならない』ということがある。 カフェで演奏アルバイトをしていたとき、ジャズ曲以外にエルトンジョン、カーペンターズ、ビートルズに至るまで様々なポップスを演奏した。理由は簡単で、要するにこれらの曲は単純に『客受け』するからだ。これはラウンジプレイヤーの宿命であり、間違っても自作の曲などは演奏できない。もちろん可能ではあるが、99%自己満足である。

 このことは当時『4ビートジャズ』いわゆる『どジャズ』にはまっていた自分にはとても新鮮でありまた苦痛でもあった。心のどこかでいつも『俺はジャズであってカーペンターズじゃねえ』と思いながら『カントリーロード』を演奏したりしていた。

いずれにせよその時感じたのが『自分の好きな曲だけを弾いてお金をもらう』難しさ、『自分よりもまずはお客さん優先』であるラウンジプレイヤーの辛さ、である。

 その形態がどうであれ、多かれ少なかれこのような『本意ではないが生活の為にやらなくてはならない』ことをプロミュージシャン達はやっているのではないだろうか。

 『酒に酔っぱらったサラリーマンのおじさんのリクエストに応えたが、その後に席で晩酌をさせられる』女性ラウンジピアニスト、『全く練習をせず学校に行けば上手くなると思いこんでいるできの悪い生徒』に何度も同じ事を説明し、挙げ句の果てには『先生が悪い』とチェンジ要求をされるジャズ講師、とにかく客を呼べとそのミュージシャンの音楽性を度外視して『下手でも何でもお客の呼べるバンド』を求めているライブハウスに出演するミュージシャン、メジャーレーベルと契約したのはいいが、レーベルの商業戦略とズレると村八分にされる恐れのある契約アーティストなどなど。

 しかし現実的にこのことを理解している『夢を抱く若者』は少ない。無理もない、『俺はあいつらと違う、俺はヘマをしねえ』と意気込めるのが若者の特権であり、そしてたとえこの事実を知っていたとしても、実際に経験してその時に自分が感じた『何か』と議論しなくては真の理解は出来ないからだ。

 私は本当にこのカフェで『プロ疑似体験』が出来たことを幸運だったと思う。そこで感じた『何か』と議論した結果、完璧でなくても満足いくジャズ生活があるからだ。

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ジャズで食っていく <その1>

ジャズで食っていくことを本気で考えていた時期がある。10年も前の話、若かりし学生の頃だ。
当時ジャズギターを弾いていた。もちろん、途方もない夢を持つ学生の多くがそうであるように、具体的なプランがあったわけではないので、それについて具体的な行動を起こしていたわけでもない。いつか誰かが『俺の才能』を発見してくれ『ミュージックシーン』に招待してくれるはずだという『根拠のない自信』を持っていたわけで、要するに『世間知らずの甘ちゃん』である。

しかし人生とは不思議なもので、学生時代の終わり頃にひょんな事からとあるカフェで演奏させてもらえることになった。そこで定期的にジャズを演奏しているピアニストと知り合いになったためだ。

夢をもつ学生に多いのだが、いざ自分が大舞台に立つとなると急に自信を無くしてしまう。私もはじめは物怖じして断ったのだが、「大丈夫、大丈夫。誰も演奏なんて聞いていないから」の一言でステージ上がる決意をする。とにかくそういったわけで電車で1時間弱のカフェへ週1度通うこととなった。
当時のギャラが3ステージで1万5000円。1ステージが大体20分だから3ステージで60分。つまり時給1万5000円ぐらいの計算になる。もっともこの額はバンドに対して支払われる総額なので、出演者が多い日は手取りも少なくなる。平均して一人当たり6000円ぐらいの収入になった。
学生にしては高額なバイトであり、おまけにステージ経験ができることもあって『俺は本当に運が良い』と何度も反芻したものである。そしてなにより『お金をもらうプロミュージシャン生活』を学生のうちに疑似経験できたことが、今後の自分の人生設計を立てる貴重な経験であったともいえる。

 <2>へ続く

ミュージシャンになる方法

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