月別アーカイブ: 2007年3月

無名のジャズメン

世の中には無名のジャズメンがたくさんいる。

ここで言う『無名』とはいわゆるマイナー、名前を言っても『誰だそりゃ?』と、簡単にいえば、ファンの間に名前が知れ渡っていないジャズメンのことである。

もちろん世界は広いので、『日本では無名』だが『ヨーロッパでは有名』、『博多では有名』だが『東京では無名』など、一口に『無名』といっても定義がなかなか難しい。

いずれにせよ私はこの『無名』アーティストが大好きである。

自宅のジャズCDコレクションを見ても、どうもメジャーアーティストのCDが少なく、『無名』のアーティストが多い。これは一口に私が偏屈で『日本でちやほやされている大御所ジャズメン』の演奏を『みんなと一緒に聴いてられっかよ』という大人になりきれない性格の為だと思われる。

しかし、経験上、これら『無名』アーティストは、かなり『おもしろい』演奏を聴かせてくれることがしばしばある。これは『無名アーティストの強み』といわれるもので、それは

1.採算を度外視したプレイをすることができる

2.俺はこれでいいんだ、的な純粋で熱いプレイをすることができる

3.雑種のため、ハイブリッドな演奏を聴かせられる

の3つに代表される。

1は、そもそも出版元が『個人レーベル』もしくは『個人に近いレーベル』なのではじめから採算を考えて売り出していない。『おめえおもしろい演奏するじゃねえか、俺がCDにしてやっから遠慮なく演奏しろや』的な『作りたいものだけを作る』職人レーベル魂が背景にある。このため『大衆受け』するプレイを前提にはしていない。『売れなくてもともと』の一発演奏が聴ける。

2は1と同じく『遠慮なく演奏させてもらえる土壌』があるため『俺の魂の叫びを聞け』的な演奏をすることができる。そしてこれはジャズにとって最も大切な要素でもある(叫びすぎて空振り三振になる奴らがほとんどだか)。

3は、『無名』ミュージシャンの最大の強みで、『何をしでかすか分からない』的な可能性を秘めているおもしろさである。

それは例えば『アムロとアユの音楽を融合してフーリエ変換』した上に『坂本龍一を久石譲の”魔女の宅急便”に織り交ぜ』て『ピーターソンとハンコック』で割って、『パットマルティーノの世界観』をねじ混ぜて、最後に顔に靴墨を塗って真っ黒にした『無名ジャパニーズ』ジャズアーティストが世界のどこかの山奥に住んでいて、ひっそりとCDを出しているかもしれない(いないだろうけど)。

とにかくそんなハイブリッド(融合)な演奏、ヒップホップをバックグラウンドに持つジャズメンなど、『無名』のアーティストは世の中にごろごろしていて、それらは大御所に負けぬプレイをしていながら自主出版やマイナーレーベルでCDを売り出している。

そういうアーティストとの『出会い』はジャズライフをより一層ワクワクさせるものである。

ジャズCDの買い方 <最終>

 前回の続きで『ジャケ買い』について:

『ジャケ買い』。これは大人になってもいつまでも忘れず信じていたい『トキメキ』『一目惚れ』『インスピレーション』をフル活用した『ジャズCD購入術』である。

 一般的にジャズCDのジャケット(表紙)はそれだけで芸術作品であるものが多い。実際ジャズCDのジャケットは一流のカメラマン、イラストレーターなどが手がけているため、それらを部屋に飾って置くだけで『サマになる』。

ならば中身はともあれ、とにかく『ときめいた』『一目惚れした』『ハっとした』ジャケットのCDを買っていったらいいんじゃないのか、というのが『ジャケ買い』の根本姿勢である。

 そしてどういうわけか、自分が『ときめいた』『一目惚れした』『ハっとした』ジャズCDは、中身も自分に合っているものが多い。村上春樹氏は、自分の探していたレアもののジャズレコードを、無造作に積まれたレコードが所狭しと並ぶ中古レコード屋で運良く見つけられたときに『ジャズの神様』の存在を感じる時がある、と自身の著書の中で述べているが、これに似たようなことかも知れない。

 もちろん多少のリスクはあるが、前回<2>の『情報』なども検討しつつジャケットも考慮にいれればジャズCD散策技術が飛躍的に向上し、特に、暇つぶしにレコード屋に『玄人面』で立ち寄ることができるようになるというものだ。

 最後になるが、いくつかのアルバムを載せておく。ちなみに『世の中で最も美しいアルバムジャケット』と称されたのは『アンダーカレント』である(らしい)。

ギタリスト、ジム・ホールとのデュオ。水面に浮かぶ女性が美しい。

アンダーカレント

アンダーカレント

  • アーティスト: ビル・エヴァンス&ジム・ホール
  • 出版社/メーカー: 東芝EMI
  • 発売日: 2006/06/14
  • メディア: CD




ハンコックとジョビンのボサノヴァ共演アルバム。サイケデリックな表紙絵が南米を彷彿させる。

ジョビン・アンド・フレンズ

ジョビン・アンド・フレンズ

  • アーティスト: アントニオ・カルロス・ジョビン, ガル・コスタ, シャーリー・ホーン, ロン・カーター, ハービー・ハンコック, ゴンサロ・ルバルカバ, ジョー・ヘンダーソン
  • 出版社/メーカー: ユニバーサルクラシック
  • 発売日: 1996/06/03
  • メディア: CD




この筋肉を見よ。肉体派ピアニスト、カーク・ライトセイのソロアルバム。残念ながら現在廃盤。

Lightsey Live

Lightsey Live

  • アーティスト: Kirk Lightsey
  • 出版社/メーカー: Sunnyside
  • 発売日: 1995/11/01
  • メディア: CD




テナーサックス、デクスターゴードンのアルバム。内容もポップだがジャケットもカワイイ。カフェなどに合いそうなジャケット。

ダディ・プレイズ・ザ・ホーン

ダディ・プレイズ・ザ・ホーン

  • アーティスト: デクスター・ゴードン, ルロイ・ヴィネガー, ケニー・ドリュー, ラリー・マラブル
  • 出版社/メーカー: 東芝EMI
  • 発売日: 2005/12/21
  • メディア: CD

ジャズCDの買い方 <その2>

 自分のお気に入りアーティストが見つかった後は、そのアーティストのジャズCDを中心に買い揃えていけばよい。しかし、これがまた『当たりはずれ』が多い。

 たとえお気に入りのアーティストのジャズCDといえども一般的にすべてのアルバムが最高ということは滅多にない。中には『実験的』と称されるアルバムも多数存在する。

 もちろん『聴いてみないと』当たりはずれがわからないことは事実だが『まあ、これなら間違いは少ないだろう』という『情報』がジャズCDのジャケットに存在する。

それは以下の通りである:

1.トリオ(3人編成)である(楽器編成が少ない)

2.スタンダード曲が少なくとも一曲は入っている

3.アルバムジャケットの表紙がよい(後述)

3.については後述する。

1と2だが、この法則に従えばせっかく購入したジャズCDでも『なんか違う』『意味分からん』ということはかなりの確率で防ぐことが出来るようになる。

 一般的にジャズでは楽器編成に制限が無い(ステージ、もしくはスタジオに入れれば何人でも可)。そして人数が増えるほど1曲あたりの時間が長くなり、またジャズ特有の『自由度』もトリオやデュオ演奏に比べて低下する現象も起こる(断定はできないが、演奏者人数が少なくなればなるほど演奏の自由度は増す)。それに対して、いわゆるピアノトリオなどでは各パートがバランスよく配置されており、またリーダー(大抵そのアルバムのアーティスト名となる)の演奏も余すとこなく堪能できる。そしてなにより『賑やかすぎず静かすぎず』がこのトリオ編成の特徴である。

 もちろんホーン(トランペットやサックス)が好きな方はこのトリオにホーンを追加したカルテット(4人編成)を買えばよい。

 2の、スタンダード曲が少なくとも一曲入っているアルバムも経験上失敗が少ない。ジャズの曲には半世紀以上もの間プレイヤー達に親しまれ演奏されてきた、いわゆる『時の洗礼を受けた』楽曲が数多くある。これらを『スタンダード』と呼ぶが、やはり『時の洗礼を受けた』楽曲だけあって、万人が認める『傑作』曲である。そしてこれらスタンダードを演奏しているアルバムなら、曲が良いだけにはずれが少ないのは当然だろう。いわばスシの『元ネタが新鮮』なら『回転寿司でも旨い』法則である。

 とはいえ、トリオ演奏のアルバムでは通常数曲のスタンダードを含んでいることが多いので、やはりまずはトリオ、ホーンならカルテットを中心に買っていくことが失敗を無くす方法といえよう。

 これらの情報は通常はアルバムの後面のPersonnel欄のアーティストで確認できる。例としては

Personnel:

Abc dfg(p) Hij klm(b) Nopq rstu(dr)

1.Autumn leaves(スタンダード)

2.original

3.original

4.In A Sentimental Mood(スタンダード)

5.original

6.Beautiful Love(スタンダード)

などである。(p) はピアノ(b)はベース、(dr)はドラムス、また(Ts)(Tp)(fl)テナーサックス、トランペット、フルートなどもある。まれにアーティストの横にこれらの略号が書かれていないことや、情報が記載されていない時があるが、その時は『腹を括(くく)る』か次回の『ジャケ買い』の方法をとる。

次回『ジャケ買い』


ジャズCDの買い方 <その1>

 ジャズCDなんて適当に自分の好きなものを買えばいいのだが、それが初心者には結構難しい。ジャズ市場は狭いといっても、いざ売り場に行くとその数は膨大で、初心者がその中から自分の趣向にあったものをチョイスしていくのは不可能に近い。ジャズに興味があるけれどいったい何を買ったらよいか分からない、というのは私の周りでもよく聞く話だ。

 自分にとって良いジャズCDに巡り会うためにはまず自分の『ジャズ耳』なるものを知る必要がある。『ジャズ耳』とは、例えば『J-POP』の中にも『ミスチル系』『コブクロ系』『あゆ系(古いか?)』などがあり、『J-POPが好き』と言った場合でも、それは無意識のうちにある『系』を指している場合が多い。そしてジャズにもこのような『系』が存在する。その中で自分にあった『系』を早く見つけ出すことで例えば、レコード屋に置いてある『今週のおすすめ』や『新譜』なるものを試聴しても、それが『買い』か『スルー』かが分かるというものである。

実際私がジャズを聞き始めた頃、この『系』なるものが分かっていなかったためむやみに『新譜』や『斬新』『天才』の文字にだまされて高いCDを何枚も買わされたものだ(もちろん中には良いモノもあったが)。

ちなみに私が一番始めに買ったジャズのCDは名ギタリスト、ジョー・パスの『Virtuoso No. 2』で、ジャズギターの教則本で紹介されていたものだ。

Virtuoso No. 2

Virtuoso No. 2

  • アーティスト: Joe Pass
  • 出版社/メーカー: Pablo
  • 発売日: 1990/10/25
  • メディア: CD

ジョー・パスがこの演奏をたった一人のソロギターでやっていることを後で知ったとき(それまで数人が演奏していると思いこんでいた)、『マジかよ、すげえこのオッサン!ブラボー!』と部屋で一人叫んだ若き日の自分がいた。

まあ私のことはいいとして、とにかく前述『ジャズ耳』を覚醒させるためには、ある一定量のジャズを聴くことが必要だ。しかしでたらめに買っていたのではお金がいくらあっても足りない。こんな時便利なのがオムニバスCDで、こんな便利なものは他にない。これを買って聴いて、『ピンときた』アーティストのアルバムを購入していけばいいのである。オムニバスとして有名なのは、

ベスト・ジャズ100

ベスト・ジャズ100

  • アーティスト: オムニバス, ジュリー・ロンドン, ジューン・クリスティ, チェット・ベイカー, エラ・フィッツジェラルド, ナンシー・ウィルソン, ジョー・スタッフォード
  • 出版社/メーカー: 東芝EMI
  • 発売日: 2006/03/23
  • メディア: CD

これは楽器別ではなくランダムアーティストだ、次の

ベスト・ジャズ100 ピアノ・スタンダーズ

ベスト・ジャズ100 ピアノ・スタンダーズ

  • アーティスト: オムニバス, ソニー・クラーク, フィリー・ジョー・ジョーンズ, ポール・チェンバース, ビル・エヴァンス, ジム・ホール, レイ・ブライアント, トミー・ブライアント, オリヴァー・ジャクソン, フィニアス・ニューボーン・Jr., ジョン・シモンズ
  • 出版社/メーカー: 東芝EMI
  • 発売日: 2006/07/19
  • メディア: CD

はジャズピアノに絞っている。

安くはないが、はじめはこれらを『辞書』と割り切って購入することをお勧めする。

私がジャズを聴き始めた頃はこんな凝縮したアルバムはなかった。あるといえば時々スーパーの出店で売っている3色刷のケバイジャケットに『真夏の夜のジャズ』などと書かれ一枚750円で売っていた海賊版ジャズCDぐらいのものだった。

次回>>>さらなる購入技術