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歳をとって良かったと思うこと

若い時にはわからなかったことでも、歳をとってから初めて理解できることはたくさんある。
先日自宅の本の整理をしていたらジェリー・コカー氏著のジャズ・アドリブ入門を見つけた。実はこの本、私がジャズに興味を持った19歳の頃に購入した書籍である。

当時はジャズギターに夢中だったが、インターネットも無い時代、情報も不足しており、ジャズ関連の書籍、CDをそれこそ『霧中』で探していた。この本は梶井基次郎の檸檬で有名な京都の丸善で購入したと記憶している。音符もほとんどなく、CDなんて付いていないし、お世辞にも読みやすい本とはいえなかったが、単純にそのタイトルに惹かれたためでもあるし、アカデミック文章で綴られた序章を読むだけでなんだかジャズが分かったような気がした。結局ピザの配達のアルバイト代からお金を工面して手に入れた。

その後この本は他の派手な表紙の教則本の脇でひっそりと出番を待つことになるが、残念ながら願いは叶わなかった。哲学的な文章で綴られたジャズ論は、派手さと即効性を求める若者には退屈であったのだろう。無理もない。しかし数十年の時を経て、当時買った教則本の多くは中古本としてどこかの誰かが使っているなかで、どいうわけかこの本だけは手元に残っていた。そしてさらに数十年後、ようやくその知の扉を開くことになる。

直観、知性、感情、音感、習慣、主にこの5つの要素がジャズ演奏の即興に必要なものである—<略>—直観、感情、音感、習慣の4つは概して無意識に行われる。それゆえに即興をコントロールするのは知性である。—<以下概略>—これら5つの要素を均等に持つことは不可能であり、我々にコントロールできるのは知性だけである。引用『第一章』

第一章に綴られたこの文章は、おそらく若い時にも読んでいたであろう。しかし記憶に残っていないため、印象に残らなかったのだと思う。しかし、今この文章を読んでみると不思議とよく分かる。

歳をとってから新たに身につけることが困難なものは『無意識』の行動であると私は思う。上記によれば直観、感情、音感、習慣の4つである。なぜなら無意識の行動は過去の経験や訓練に基づいているためである。『感情』もしかり。感情は性格を決定づけると考えれば分かりやすいだろう。歳をとるにつれて性格の変化は減少し、興味・趣向も限局的になってくる。幼い頃からジャズに親しみ、音楽環境があり、親父は音楽プロデューサーで・・・などの環境で育った子どもは4つの要素が常人とは全く違うだろう。もちろん私なんて4つの要素は標準かそれ以下である。

しかし知性は違う。学ぶのに遅すぎることはない、という名言があるように、自分でコントロールできる唯一のツールであるこの知性、改めて大切にしなければ、と思った。

演奏は下手でもかまわない。音楽を学ぶ楽しさを一生の趣味にしていきたいと思う。